工女の虐待 4
ところが返答はキヌイの申し立てとは異なっていました。
平素の虐待については、その確たる事実を得られず、また雇主関根イト方は、工女20人余も使用する字内第一の機業家であるので、工女の直接監督は雇主の親戚である島田タカに一任してあります。
今回の被害者である千葉キヌエ(キヌイ)は、本年2月中雇われてきました。
しかし、以前に宿屋奉公した経歴があり、性質は遊惰で業務を怠るためしばしば雇主に叱責され、また朋輩の金品を窃取した疑いもあって、朋輩工女までから忌避されていたといいます。
・・・ともかく関根方の工女の待遇は他の機業家よりも酷であるという資料はありません。
今回の殴打創傷罪に処せられたタカ、ヤイの両人がキヌエを殴打負傷させた原因は第1に朋輩工女の金銭を窃取した嫌疑と、第2は業務の出来ないこととによるものと認める、というものでした。
では、キヌエの申し立てと警察の報告とどちらが正しいのでしょうか。
裁判の審理判決の結果はもとより、判決理由からみてもキヌエが受けた虐待は事実とみられます。
また判決理由の中で、司法警察官の聴取書中タカは千葉キヌエ(時にはヨシェとなっている)が糸繰りをしていて、それが間にあわない時は、裸体にして手で背部の辺を突いただけとの陳述もあります。
しかし、医師の診断書の記載通り公判廷供述中の「ヨシエ」の創傷はひどく鶏卵大の血腫を生じているほどの傷であることを認めています。
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