工女の虐待 2
・・・ところが東京とは偽りで、その実キヌイは大宮町に連れて行かれ、ある桂庵の手を経て前記関根方へ前借金15円で住み込んだが、その15円さえ自分の身には一文もつかず、ことごとく周旋人に捲き上げられてしまった。
ここではじめて身を売られたことを知り、どうしたらよいか案じたが、相談相手一人たりともなく、ただ涙をのんで同家で過すことにした。
忍耐して一生懸命働いたが、日がたつにつれて主人の待遇は悪くなり、その上主人に従う次女タカが女の身にあるまじき悪口雑言をはいてキヌイをののしるのだった。
それをキヌイは従順に柳に風と受け流していれば、それをまたよいことに調子に乗って付け上り、
『豚力猫ヲ使フヤウニ1分間モ休息サセズ毎日1丈ノ機ヲ織ラザレバ食物ヲ与ヘスト云渡スニ至リシヨリキヌイ、
夜ノ1時2時迄機台ヲ下リルコト叶ハス
身体次第二衰弱シテ今ハ苦痛二堪へ難キマデニ至リシヲ無慈悲ノタカ等ハ仮借ナク
叱シテ現二去月6日ノ如キタカハ、些細ノ事二角芽立チ雇女ノヤイ、ヲ加勢二頼ンデ泥二塗シ下駄ヲ取ルヨリ泣キ詫ブルキヌイ、
ヲ引倒シテ頭部面部ノ嫌ナク打据エテ打撲ヲ負ハセタルニゾ流石ノキヌイ、モ心ヲ決シ……』
・・・翌日午前4時頃家内の者の目覚めないうちにひそかに寝所壷起き出て、ひとまず縁の下に身を潜めていました。