ほんものの名酒とは 4
この速醸翫をさらに合理化したのが高温糖化翫です。
これは温度を高めることで酵素の糖化を短時間で促進し、それに乳酸を加え、酵母を加えて培養します。
10日目には酒母が仕上がります。
現在では、進んだ純米酒づくりの技術をもつ蔵でも、高温糖化翫を使っているケースもありますし、大部分の酒蔵では速醸翫を用いて、生翫や山廃翫を使う酒造家はまれです。
しかし、「生翫でつくった酒は喉ごしがよい」とか、「秋あがりする」(夏を越して熟成すると味がのる)とか専門家の間で言われ、すぐれた吟醸をつくる場合には、わざわざ山廃翫を使っている蔵もあります。
たとえば前述の鶴来の『菊姫』や、亀の尾の酒米を復活させて『亀の翁』というすばらしい純米吟醸酒の妙味を再現した新潟の『清泉』の久須美酒造は、自然の理法に適った山廃翫によっているものです。河成鎮作氏によると、これは、山廃翫による酒母と、速醸翫による酒母とでは、やはり香りや風味の点で格段の差があるからです。
とくにうま味の根源である微妙玄妙な酸度の点では山廃翫がまさり、その自然に醸し出す味わいや香気を、速醸翫では実現しにくいようだ、と醸造の専門家は説明しています。